臨床試験情報
「研究課題:先天性腎性尿崩症の全国調査」のアンケート調査にご協力いただける先生方へ
【研究課題】
先天性腎性尿崩症の全国調査
(審査番号:2023351NI)
【研究機関名及び研究責任者氏名】
この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。
主任研究機関 東京大学大学院医学系研究科 腎臓・内分泌内科
研究責任者 槙田 紀子(腎臓・内分泌内科 准教授)
担当業務 研究統括・データ収集および解析・論文執筆
【共同研究機関】
施設研究責任者:名古屋大学・大学院医学系研究科 教授 有馬 寛
調査協力、助言、論文執筆とアドバイス
施設研究責任者:東京医科歯科大学 理事 内田 信一
調査協力、助言、論文執筆とアドバイス
施設研究責任者:藤田医科大学・医学部 教授 水野 晴夫
調査協力、助言、論文執筆とアドバイス
施設研究責任者:長崎大学・大学院医歯薬学総合研究科 准教授 伊達木 澄人
調査協力、助言、論文執筆とアドバイス
施設研究責任者: 島根大学医学部小児科学教室 准教授 鞁嶋 有紀
調査協力、助言、論文執筆とアドバイス
【研究期間】
承認日 ~ 2028年12月31日
【対象患者となる方】
先天性腎性尿崩症の患者を診療中または診療した経験がある先生方
【研究の意義】
腎性尿崩症は腎臓のバソプレシン(抗利尿ホルモン)に対する抵抗性によって引き起こされます。先天性と薬物などによる後天性がありますが、そのうち先天性の90%はVasopressin 受容体のサブタイプ2(V2受容体)の病的バリアントで説明可能です。V2受容体の病的バリアントによる腎性尿崩症は伴性潜性遺伝で、ほとんどの病的バリアントでは完全に機能を喪失します。頻度は、カナダのケベックでは男性100万人に8.8人、オランダでは1600万人で50家系であり、本邦では約400人程度と考えられています。
我々は間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版の中で、先天性腎性尿崩症の診断と治療のてびき及びクリニカルクエスチョンと、システマティックレビューによる推奨、解説文を作成してきました(1)。その過程で未解決の問題が残されていることがわかってきました。また、2014年の本邦での全国アンケート調査で143人の先天性腎性尿崩症についての情報がまとめられていますが(2)、下記の様な明らかにできていない点があります。
① 診断について
(a) 遺伝学的検査の結果で確定診断してよいか?
※先天性腎性尿崩症の診断にはバソプレシン負荷試験による評価が必要ですが、重症型の場合には水制限試験やそれに引き続くバソプレシン負荷試験を行わないことも想定されます。
(b) バソプレシン負荷試験の結果により治療薬としてのデスモプレシン(dDAVP)の有効性が予測できるか?またdDAVP負荷試験による評価は必要か? ※水制限試験で尿浸透圧が300mOsm/kgを超える軽症型の場合には、バソプレシン負荷試験で尿量の減少と尿浸透圧の上昇を認めることがあります。
② 治療について
(a) サイアザイドの尿量減少効果は持続するのか?
※サイアザイドの有効性は多くの過去の報告で示されていますが、中断されているケースが少なくありません。
(b) dDAVPが有効な症例がどの程度あるのか?その際のdDAVPの必要量は?
(c) インドメタシンなどのプロスタグランジン阻害薬の有効性と継続率は?
(d) 飲水励行、強制排尿、頻回の体重測定、塩分制限やタンパク制限などの生活指導は予後を改善するのか?(薬物治療は不要か?)
(e) 低カリウム血症の合併率、その際のカリウム保持性利尿薬の有効性は?
③ 予後について
(a) 合併症の有無とその重症度に関連するものは何か?
※2014年の全国調査では合併症として神経、腎尿路合併症の割合について記されていますが、その詳細は明らかではありません。10年前と比較して、早期診断あるいは適切なマネージメントによって、神経発達症の中でもいわゆる精神発達遅滞域にいたる割合は減り、軽症(注意欠陥障害や自閉症スペクトラム障害など)の割合が増えてきているのではないか?腎尿路合併症についても尿カテーテル留置、自己導尿、腎代替療法を必要とする割合は減ってきているのではないか?といった疑問があります。また、成長障害については記載がありません。
本研究では、診断時の年齢、診断時の高浸透圧血症や重症度、原因遺伝子のバリアント、生活指導、バソプレシン負荷試験の反応性、dDAVPによる治療介入、サイアザイドなどの治療の継続と合併症との相関を検討したいと考えています。
上記診断・治療・予後に関する未解決の問題以外にも、本疾患患者の非常事態時(周術期、意識障害時、シックデイ)における対応も明らかではありません。さらに、生命予後を規定する因子も明らかになっていません。また、特異な状況では、真逆の電解質異常として低Na血症を発症することもあり、血清浸透圧の急激な変動のリスクになりえますが、その発症誘因は明らかになっていません。
今回の全国アンケート調査によってこれらが少しでも明らかにできれば、特異的治療法のない中でも今後の先天性腎性尿崩症の診断、治療、予後改善に寄与できる可能性があります。
(1) 厚生労働省科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業.間脳下垂体機能障害に関する調査研究班 日本内分泌学会 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版
(2) Fujimoto M et al. Clinical overview of nephrogenic diabetes insipidus based on a nationwide survey in Japan Yonago Acta Med 57:85-91, 2014
【研究の目的】
先天性腎性尿崩症は稀な疾患であり、本邦での先天性腎性尿崩症の診断・治療・合併症・遺伝学的検査の現状について理解するとともに、今後の診断・治療・合併症管理の改善につなげたいと考えています。
今回のアンケート調査で明らかになった臨床像(重症度)と原因遺伝子のバリアントについて、個人情報を完全に切り離した上で抽出し、特異的治療法のない本疾患の治療薬開発をめざします(データ二次利用による別の研究)。
【研究の方法】
これまでのカルテ情報に基づいて回答されたアンケート調査の情報(家族歴・社会歴・診断年齢・診断時の症状や徴候・現在の症状や徴候・治療法・治療の効果・併存症・合併症・遺伝学的検査の結果)を用いて行う研究です。先天性腎性尿崩症の患者さんに新たにご負担いただくことはありません。
本アンケートを確認していただいている医師を対象とした一次アンケート調査で先天性腎性尿崩症の診療経験等とアンケート(二次アンケート調査)への協力の可否について確認します。
二次アンケート調査にご協力いただける場合には、公開した先天性腎性尿崩症の患者さん向けの情報提供のページに所属の各医療機関よりリンクを設定していただき、患者さん向けにオプトアウト形式での同意確認にご協力いただきます。先天性腎性尿崩症の患者さんからのアンケート調査への協力について、『協力したくない』という申し出が、診療を提供している/していた医療機関に対して期間内にない場合には、二次調査のアンケートにご回答をお願いいたします。
二次アンケート調査では、先天性腎性尿崩症の患者さんの臨床情報(診断年齢・診断時の症状や徴候・現在の症状や徴候・治療法・治療の効果・合併症頻度・遺伝学的検査の結果)を情報として取得します。
二次アンケート調査に要する時間は1症例あたり30分程度を想定しておりますが、診療情報を確認する必要がある場合にはより時間がかかることもあります。
【情報の二次利用について】
先天性腎性尿崩症の患者さんの臨床情報、バリアント情報(遺伝子変異)を用いて、薬剤に対する反応性を確認します。
また、先天性腎性尿崩症の患者さんの臨床情報、バリアント情報(遺伝子変異)と薬剤への反応性を統合的に解析し、新しい遺伝子変異の影響を予測することを目指します。
これらの目的で、本研究で得られたデータの内、下記の項目について二次利用を行います。データの二次利用は倫理指針を遵守して行います。これらの研究を行う際には、研究実施前に東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科の公式websiteで情報公開を行います。
・臨床情報(主に疾患の重症度)
・遺伝学的検査結果(遺伝子変異の情報)
その他の研究にデータを二次利用する場合には、倫理指針を遵守し、倫理委員会で審査を受けて承認を得たのちに、データの二次利用を行います。
【個人情報の保護】
この研究では、アンケートへの回答者である医師の個人情報を収集いたします。個人情報を収集する理由としては、一次アンケート調査から二次アンケート調査に進むときに連絡先が必要となるからです。
二次アンケート調査後には、研究終了後5年間は個人情報を含めて研究データとして保管をいたしますが、解析に供するデータとしてはアンケート回答者である医師の情報を除外したデータを用いて解析を行います。
この研究で収集する情報は、直接患者さん個人を特定できる情報を含みませんが、先天性腎性尿崩症が希少疾患であることから、臨床情報から個人を特定できる可能性があります。
そのため、この研究に関わって収集される情報・データ等は、外部に漏えいすることのないよう、特に慎重に取り扱う必要があります。
研究責任者・管理責任者である槙田紀子はそのデータを移譲され、研究責任者・管理責任者のみが使用できるパスワードロックをかけたパソコンで厳重に保管します。
研究結果は、患者さん個人が特定出来ない形式で、学会等で発表されます。収集したデータは厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。5年間経過したのちに、再現できない形で破棄します。なお研究データを統計データとしてまとめたものについてはお問い合わせがあれば開示いたしますので下記までご連絡ください。
この研究は、東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学医学部附属病院長の許可を受けて実施するものです。
この研究に関する費用は、研究代表者の槙田紀子の研究費(厚生労働科学研究費補助金)から支出されます。
この研究について開示すべき利益相反はありません。
尚、ご協力くださった先生方への謝金はございません。
2024年8月
【問い合わせ先】
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 准教授 槙田紀子
住所:東京都文京区本郷7-3-1
電話:03-3815-5411(内線 37224) FAX:03-5800-9818
Eメールでのお問い合わせ:norimakitky”AT”gmail.com
※E-mailは上記アドレス”AT”の部分を@に変えてください。
医療機関名 東京大学医学部附属病院
診療科名 腎臓・内分泌内科 診療科責任者名 南學正臣