臨床試験情報
後縦靭帯骨化症(OPLL)の疾患モニタリング研究(課題名:希少な内分泌代謝疾患、糖代謝異常症、骨代謝異常症、腎疾患の病因、病態解析のための次世代シークエンサーの利用)に参加された方およびそのご家族の方へ
この研究の対象者に該当する可能性がある方で、
〇診療情報等を研究目的に利用または提出されることを希望されない場合
〇研究への協力を希望されない場合、あるいは協力を途中でおやめになりたい場合は
2025年 4月末を目安に末尾に記載の問い合わせ先までご連絡ください。
研究課題
東京大学医学部附属病院 後縦靭帯骨化症(OPLL)の疾患モニタリング研究
(審査番号2024375NI)
研究機関名及び本学の研究責任者氏名
この研究が行われる研究機関と研究責任者は次に示すとおりです。
研究機関 東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科
研究責任者 難治性骨疾患治療開発講座(社会連携講座)特任准教授 伊東 伸朗
担当業務 研究計画立案・データ取得・データ解析・論文発表
研究協力機関
該当なし
既存情報の提供のみを行う者
該当なし
研究期間
承認日~2027年03月31日
研究目的・意義
脊柱靭帯は、脊柱の力学的荷重負担と運動機能を果たすために必要な剛性と柔軟性の両方の機能を担うために不可欠です。後縦靭帯骨化症(OPLL)は、頸椎から腰椎までどの脊椎レベルでも起こりうる難病ですが、頸椎のOPLLは胸椎の OPLL よりも一般的であると考えられています(Abiola et al 2016)。骨化靭帯は慢性的な圧迫を引き起こし、脊髄や神経根を圧迫して重度の脊髄症を招き、極端な場合には対麻痺を生じることもあります。OPLLは進行性の疾患であり、特に脊髄症を伴うOPLLは進行性です。現在、脊髄や神経根を除圧する手術以外に、OPLLの治療法や予防法は確立していません。OPLLは 50~60歳台で診断され、男女比は 2:1です(Yoshimura et al 2013)。OPLL は頻度の高い疾患ですが、その頻度は地域によって異なります。OPLL の有病率は、欧米(0.1-1.7%)に比べ、東アジアの集団(0.4-3.0%)、特に日本(1.9-4.3%)において有意に高いと報告されています(Inamasu et al 2006; Yoshimura et al 2014; Katoet al 2023; Koike et al 2023)。
OPLLは複雑な遺伝因子と環境因子が相互作用する多因子性疾患です。疫学研究では、OPLLと 2型糖尿病(T2D)、高 BMI、低無機リン酸、 X染色体連鎖性低リン血症性くる病、C 反応性蛋白の増加など他の様々な特性との関連が報告されており、最近の研究ではOPLL と BMI および T2D との間に正の相関があることが示されています(Koike et al2023)。ROAD study の3年追跡調査(Yoshimura et al 2013)で示されたように、OPLLはびまん性特発性骨増殖症(DISH)と併存することが多いです。DISHは骨化が亢進する全身性疾患で、靭帯や腱靭帯付着部の骨化によって特徴づけられます。特に脊椎で多い
ですが、末端関節でも認められます(例:アキレス腱)。また、OPLLと大腿骨頚部骨密度(BMD)および血漿ペントシジン濃度との間に有意な関連が見出されています。
OPLL の理解について進歩が見られる一方、臨床試験や潜在的な治療法の情報として利用するため、患者臨床経過、疾患の進行、様々な患者サブセットにおける OPLL の病状をよりよく理解するとともに、疾病負担を特徴づけるさらなる知見が必要です。
ENPP1は、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ 1 (ENPP1)という酵素をコードしており、細胞外 ATPを加水分解してAMPと石灰化を阻害する無機ピロリン酸(PPi)を生成する全身に広く分布するエクトエンザイムです。ENPP1に変異があると循環 PPi レベルが低下し、その結果、鉱化および石灰化が起こります。両アレル(対⽴遺伝⼦)ENPP1欠損症の表現型には、乳児全身動脈石灰化(GACI)、常染色体劣性低リン血症性くる病2(ARHR2)などがあります。ARHR2は、FGF-23を介するくる病/骨軟化症を特徴としますが、脊椎靭帯骨化が成人患者に起こる合併症として知られていることは注目に値します(Saito et al 2011, Saito et al, 2022, Kato et al 2023)。
OPLL 患者では ENPP1 多様体(バリアント)が同定されており、その割合は 14%と高いことが報告されています(Kato et al, ASBMR poster 2023; Kato et al ECTS poster2023)。さらに、OPLL 患者の症例報告における検査所見では、血漿中 PPi濃度が基準値より有意に低く、OPLL に ENPP1 が関与していることは、EPNN1 変異を持つ OPLL の特徴を示すマウスの偶発突然変異株の発見によっても支持されています(Okawa et al,1998)。OPLL患者における ENPP1変異の影響を完全に理解し解明するためには、さらなる研究が必要です。
イノザイム社は、病原性石灰化を伴う希少遺伝性疾患を対象とした新治療法の開発を行うバイオ医薬品会社です。INZ-701 は、治療用の遺伝子組換えヒト ENPP1-Fc 融合タンパク質で、現在、成人および小児の ENPP1 欠損症患者を治療する酵素補充療法として臨床試験中です。イノザイム社の過去の臨床試験データより、軟部組織の石灰化を予防し、適切な骨の健康を維持する上で ENPP1 が重要であることが強く示唆され、そのため、INZ-701 は ENPP1 変異を有する OPLL 患者に適した治療選択肢となる可能性が見出されました。
本研究はイノザイム社からの委託を受けて行われる研究です。本研究では OPLL 患者群の診療記録を分析することによって、OPLL 患者の病歴、症候、治療と介入、予後、その他の疾病負担と医療資源利用の指標を詳細に理解すること、また過去の当院での検討(審査番号 G10115)によって確認されたENPP1変異を有する患者と有さない患者の間で所見を細分化し、差異があるかどうかを明らかにすること目的としています。
研究の方法
当院では「希少な内分泌代謝疾患、糖代謝異常症、骨代謝異常症、腎疾患の病因、病態解析のための次世代シークエンサーの利用」(審査番号G10115)にて、OPLL 患者さん50名における遺伝子解析結果解析の研究を行いました。
本研究は該当患者さん 50 名のこれまでの診療録(カルテ)に記録されている年齢、性別、診断日、診断までの期間、既往歴、併存症、家族歴、臨床症状、血液・尿検査結果、レントゲン検査所見、治療内容(手術の有無等)、QOL、治療経過、等のデータを取得して解析を行う研究であり、 研究対象者の皆さんに新たにご負担いただくことはありません。
またご参加いただいた研究課題「希少な内分泌代謝疾患、糖代謝異常症、骨代謝異常症、腎疾患の病因、病態解析のための次世代シークエンサーの利用」 (審査番号 G10115)にて提供いただいた ENPP1 遺伝子に関する情報を利用させていただく予定ですが、 こちらについても研究対象者の皆さんに新たにご負担となることはありません。
利用又は提供を開始する予定日:実施許可日(2025年1月21日)
なお、研究計画書や研究の方法に関する資料を入手・閲覧して、研究内容を詳しくお知りになりたい場合は、末尾の連絡先にお問い合わせください。他の研究対象者の個人情報等の保護や研究の独創性確保に支障がない範囲でご提供させていただきます。
個人情報の保護
この研究に関わって取得される資料・情報等は、外部に漏えいすることのないよう、慎重に取り扱う必要があります。
取得した資料・情報ならびにゲノム情報・データは、解析する前に氏名・患者 ID 等の個人情報を削り、代わりに新しく研究用の符号をつけ、どなたのものか分からないようにします。どなたのものか分からないように加工した上で、研究責任者のみ使用できるパスワードロックをかけたパソコン、鍵のかかる部屋で厳重に保管します。ただし、必要な場合には、当診療科においてこの符号を元の氏名等に戻す操作を行うこともできます。
この研究のためにご自分(あるいはご家族)の情報・データ等を使用してほしくない場合は主治医にお伝えいただくか、下記の問い合わせ先に 2025 年 4 月末を目安にご連絡ください。研究に参加いただけない場合でも、将来にわたって不利益が生じることはありません。
ご連絡をいただかなかった場合、ご了承いただいたものとさせていただきます。
研究の成果は、あなたの氏名等の個人情報が明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌等で公表します。また、研究結果の報告のためにイノザイム・ファーマ社に成果報告書ならびに中間報告書を提出します。
取得した情報・データ等は厳重な管理のもと、研究終了後5年間保存されます。保管期間終了後には、データをパソコンのハードディスクから完全に削除することで廃棄します。なお研究データを統計データとしてまとめたものについてはお問い合わせがあれば開示いたしますので下記までご連絡ください。
尚、提供いただいた資料・情報の管理の責任者は下記の通りです。
資料・情報の管理責任者
所属:難治性骨疾患治療開発講座(社会連携講座)特任准教授
氏名:伊東 伸朗
本研究の結果として知的財産権等が生じる可能性がありますが、その権利は国、研究機関、民間企業を含む共同研究機関および研究従事者等に属し、研究対象者はこの特許権等を持ちません。また、その知的財産権等に基づき経済的利益が生じる可能性がありますが、これについての権利も持ちません。
この研究は、東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学医学部附属病院長の許可を受けて実施するものです。
この研究に関する費用は、イノザイム・ファーマ社からの受託研究費から支出されていますが、イノザイム・ファーマ社に都合のよい解析を意図的に行うことはありません。
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 骨ミネラル代謝研究室は協和キリン株式会社より受託研究費の提供を受けていますが、東京大学医学部利益相反アドバイザリー機関に報告し、利益相反マネジメントを適正に行っています。研究の実施や報告の際に、協和キリン株式会社に都合のよい成績となるよう意図的に導いたりすることはありません。
尚、あなたへの謝金はございません。
この研究について、わからないことや聞きたいこと、何か心配なことがありましたら、お気軽に下記の連絡先までお問い合わせください。
2025年 2月
連絡・お問い合わせ先
研究責任者:伊東 伸朗
連絡担当者:木村 聡一郎
〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 骨ミネラル代謝研究室
電話:03-3815-5411(内線 35712)
FAX:03-5800-9760
e-mail:nobitotky@gmail.com